理事長のひとこと 2017年8月
2017年8月30日

人は「幸せになりたい」と願って暮らしています。

人は「幸せになってほしい」という願いを受けて生まれてきました。

今月の「幸せのレシピ」をご紹介します。

レシピ3 できないことからではなく、できることから幸せを作り始めましょう。

毎年、特別支援学校の高等部を卒業する生徒さんが、卒業後の行き先を決めるための実習を行います。ご本人とご家族、そして学校の先生の中には「実習がうまくいきますように!」という気持ちでいっぱいの方もいます。そんな気持ちがとくに強かったAさんの母親から実習が始まる直前に電話がかかってきました。

「子供が発熱してしまったので予定していた実習をお休みするかもしれません」
というお話でした。Aさんは、緊張が高まると発熱してしまう傾向があるようです。無理に実習をしてもつらい体験になってしまう可能性が高いので、実習は延期することにしました。そして学校の担任の先生とご家族と実習を受けいれる私たちとの話し合いが始まりました。

通常の実習は、2週間の期間で、実習先の福祉事業所のプログラムに参加する内容となっていますが、Aさんが「実習をしてみてよかった」と思える体験にすることが大切であることを最初に確認しました。Aさんは精神的なプレッシャーから発熱しやすいわけですから、Aさんが好きな音楽のプログラムだけに3日間参加することから始めて、卒業までの期間をかけて、だんだん慣れていくことができるステップを作りました。音楽プログラムにはAさんが好きという「黒猫のタンゴ」をとりいれてAさんが楽しめるようにしました。Aさんが少し照れながらも嬉しそうに「黒猫のタンゴ」をうたっているときの笑顔が印象的でした。

特別支援学校を卒業する生徒さんの実習では、社会人になるのだから「君のできていないことも、できるようにがんばらないといけませんよ」という視点でチャレンジし、チャレンジさせられる場合が多いように思います。自分の弱点を克服することを目標にできるほどに、成功体験を積み上げて自分に自信が持てているのであれば、有意義なチャレンジになるのでしょう。しかし、自分に自信が持てていない人にとっては、自分ができることであっても不安になる場合もあるのです。自分のできることからチャレンジしていく幸せづくりの道筋があって当然ですし、そのようなやり方が従来のスタイルに当てはまらないという理由で否定されてはならないはずです。

Aさんが実習をしてからおよそ5年間が経過します。現在のAさんは、週に4日間を利用することが定着していて、音楽プログラム以外のプログラムにも参加し、楽しんで参加するプログラムも増えました。さらに、母親が行っていた送迎も事業所のサービスを利用したり、事業所で提供している美容サービスやガイドヘルパーを利用しての通院といった暮しに必要なサポートをうけはじめています。Aさんは、ご家族に依存するスタイルではない社会的な資源を活用した自立の領域を広げつつあります。

レシピ3 できないことからではなく、できることから幸せを作り始めましょう。

社会福祉法人白峰福祉会
理事長 森 公男